仮想通貨ビットコインを扱う施設取引所Mt.Gox(マウントゴックス)の運営会社が経営破たんしたニュースが飛び交っています。5年前にも同じようなことがあり、当時それについて別のところでコラムを書きました。以下、5年前に書いたものをそのまま載せます。
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ネット仮想空間としての「セカンドライフ」が世界中で話題になったのは、ほんの何年前でしょうか(以下、FPのセカンドライフと区別するため「仮想セカンドライフ」とします)。話題になった時は多少興味を持ちましたが、自分でやってみたわけでもないし、仕組みもよくわかりませんでした。
中学生の頃、「モノポリー」という、スゴロクと出世ゲームを合わせたような人生ゲームをやったことがあります。それのインターネット版かな、くらいしか分かりません(違っていたらごめんなさい)。要は、現実の世界とは別にある「もうひとつの」時間空間という意味です。仮想セカンドライフでは、仮想通貨で取引したり、その仮想通貨を現実界のお金に換えることもできるらしいです。
ファイナンシャル・プランニング(FP)でいうセカンドライフというのは老後設計のことです。会社(事業)を引退した後にどういう人生目標を描いているか、その目標をどうやって実現していくか。引退後の希望が実現し悠々自適で、のんびりした生活が思い描けるでしょうか。実際は、老後も夫婦で働かなければ生活していけない、病気したら一気に貯蓄がなくなる、家のローンが残っているのに定年前にリストラされた、定年時に貯蓄が残っていない、などなど、けっこう切実です。
仮想セカンドライフは、現実界とは別にある「もうひとつの(裏側の)」人生、FPのセカンドライフは現実界にある「第2の」人生という意味を持ちます。現実生活で切実な状況にある人が、まさか、「セカンドライフ」の意味を取り違えたりはしないだろうか・・・、と少し危惧していました。
■ 仮想空間はなぜ終焉したか
そんなことを思っている矢先に、仮想セカンドライフを運営しているベンチャー企業が次々と撤退、閉鎖、破綻という記事が出ました。仮想都市はゴーストタウンと化し、仮想通貨を持つ人は仮想破産、という事態が“あの中の世界”で起きているようです。リアル(現実)の世界では、このシステムを運営している企業の社員は実際に失業し、現実世界でも破産しかねません。誤算は、どこにあったのでしょう。
利用者の声を読むと、これだけネット世界が進化しているのに、この仮想空間は“リアル感”に欠け、システム作りの進化が遅れていたと言います。ネットに慣れきってしまったユーザーは、「ちゃちぃ」のがわかると、ひとつの仮想空間に居続けることに飽きて、さっさと出て行ってしまうということです。
最近、円天の詐欺問題や、天才女トレーダー投資詐欺事件など、相変わらず「うまい話」に騙される事件が相次いでます。円天などは、ネットの仮想空間ではありませんが、会員だけで流通する「円天通貨」やショッピングモール(商店)があります。会員は、年配者が多いと聞いています。結局、方法やシステムは違えど、現実界でセカンドライフを迎える人も、「仮想」という、何か誘惑的で閉ざされた、独特の空間に居心地を求めているのでしょうか。
ネットの普及によって、「仮想」の世界は、これからも進化していくでしょう。ネット銀行、ネット証券、ネット保険、ネット商店・・・。しかし、仮想に浸りきると、リアルの世界で適応しにくくなるのではと案じています。サラリーマンが現役を終えた後に迎えるセカンドライフは、決して「仮想空間」ではありません。お金も身体も食べる物、住む所もすべてリアルな「現実空間」です。現実だからこそ、最終的に人と人の対面でのやりとりや取引、それに伴う中立な相談やコンサルティングが不可欠になってくるのだと思います。
(2009.02.24)