外貨建ての一時払終身保険は保障と運用の両建てが期待される商品、商品選びのコツはリスクを理解したうえで、「利率」「保障」「費用」の3つをおさえること
金融商品のなかでも外貨建ての終身保険、特に一時払型の保険は保障の安心と運用の利益を同時に期待できることで人気があります。その反面、為替変動により受取額が増減するのではないか、費用がどの部分でかかるかなど不安視する方がいるのも現実です。選び方のポイントとして積立利率はいくらか、運用利回りはどれくらいか、保障額はどれだけになるか、契約初期費用はあるかなどで他の商品と比較することをお勧めします。
■一時払外貨建終身保険を申し込むメリット
外貨建ての終身保険で一時払型のものには次のメリットがあります。
(1) 積立利率が円建てに比べ高い
(2) 保障と運用を併せ持つタイプが多い
(3) いつでも円貨に移行できる
外貨建ての払込保険料は米ドルや豪ドル、ユーロなどで運用されます。積立利率は現在の平均は2~3%なので、国内の定期預金と比べたらはるかに高く魅力的です。最低利率も保証されています。外貨での運用で増えた分は保障額に上乗せされます。これが保障と運用の両建てメリットとされるところです。もちろん、いつでも円貨に移行することができるので、保障だけでなく年金・介護・相続目的にも利用できます。
■為替リスクから元本割れするデメリット
このように魅力的な商品ですが、じつはトラブルも多くなっています。それは外貨建保険には元本割れが起きうるというリスクがあり、そのことが十分認識されずに申し込まれる人が多いからです。
そのリスクは主として為替レートから起きます。払い込んだ保険料が外貨で運用され、いざ保障が必要となって円に戻す時を考えましょう。例えば契約時の為替レートが仮に1ドル100円だったものが1ドル90円の円高になった場合です。
一時払いの保険料1万ドル(100万円)を運用した結果、1,000ドル(10%の運用益)の上乗せがあったとします。しかし基本保険金額の払戻しは99万円(11,000ドル×90円/$)と元本割れしてしまいます(ほかに為替手数料もかかります)。このように円高になっていると、払込金の運用益分がとんでしまうだけでなく元本も減ってしまいます。もちろん円安になれば、逆に払戻額は増えます。ただし将来換金時の為替レートがどのタイミングでどうなるかはわかりません。これが為替リスクなのです。
中途解約でも同じことが言えます。一時払いで外貨建終身保険を申し込んだ後に解約すると、申込みから一定期間経たないと返戻額が目減りしてしまうことがあります。これは上記の為替リスクからも生じますが、積立金の運用状況からも起きます。申込者にとっては、保険は目減りすることはないという一般的な認識がありますから、これを「元本割れ」と捉えられてしまいます。
ほとんどの人は100万円以上も一括で払ったら、本人は貯蓄したつもりの感覚でしょう。いつでも払い込んだ分が丸ごと現金で戻ると思っています。実際、保険と認識せずに預金感覚で申し込み、払戻時に減額となったことでトラブルになったりしています。
■外貨建保険の仕組みの複雑さ
保険はシンプルな仕組みほど、商品性が良いと言えます。上述のように外貨建商品には為替リスクがありますが、ほかにも大事な要素があります。それは費用です。外貨建保険に関わる費用は見た目ではわからないところでかかっています。
これらの費用金額は手数料として別途払うわけではないので(自動的に差引控除)、支出として認識しにくくなっています。いくら見かけの積立利率や保障額が高くても、費用として差し引かれる分が多くなると解約時や保障時の実質的な利回りが下がってしまいます。
円で申し込みドルで運用し、また円に戻して受け取るという通貨換算の往復がある分、どうしても外貨建商品の仕組みは複雑になります。さらに保障と運用を併せ持つわけですから、ますますわかりにくくなるのはやむをえないでしょう。大切なことは、そのことを理解したうえで申し込むかどうかです。
■外貨建保険を選ぶポイント
以上を踏まえて、外貨建ての一時払終身保険を選ぶポイントを見てみましょう。まずは費用の確認です。
(1)契約時にかかる初期費用
一時払契約では、払込保険料の数パーセントが一括でかかる場合があります(かからないものもあります)。保障額が高くなれば手数料も相当額になります。この費用は契約時に保険金額から差し引かれるためいくらかかるのか認識しにくいので必ず確認しましょう。
(2)契約中にかかる費用(毎年)
保険関係費として死亡保障に備えたり、保険契約を維持するための費用です。
(3)外貨契約にかかる費用
円貨を外貨で入金する場合や、保険金を円貨で受け取ったり円建終身に移行する場合の為替手数料です。
(4)解約にかかる費用
解約返戻金を受け取る時にかかります。
(5)年金にかかる費用
年金受取に移行した場合に年金支払期間中にかかる費用です。
(6)特約費用
特約付加の申込についてかかる費用です。
最低限おさえるポイントとして、
・初期費用がかかるかどうか
・積立利率および積立の最低保証はどうか
・保障の高さはどうか
を比較するとよいでしょう。
■利率と実質利回りの確認
もう1つ大切なことは、いくらの払込をして20年後、30年後にいくら戻ってくるかを試算してもらうことです。これが実質利回りです。つまり戻って来る手取額の割合です。積立利率は案内書にも記載されていますが、積立利率から費用率を控除した後の実質利回りは記載されていないのが普通です。それは個人の属性や申込条件によって一概に設定しにくいためです。申込相談時には必ず販売者側に試算してもらい確認することが重要となります。
■まとめ
保障のみあるいは運用のみの商品を望むなら、それにふさわしい個別商品の選択があるはずです。外貨建終身保険は、保障を確保しつつ資産を増やしていくという両建てが期待できる保険と言われています。
ただ、それゆえに商品の仕組みがどうしても複雑になり、リスクやコストも高くなりがちです。ですからそのことを理解したうえで、不明なところは遠慮なくファイナンシャル・プランナーなどのアドバイスを受けるようにして、自分にとって良い商品選びをするようにしてください。